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THINK ABOUT SOMETHING.

創作の勘所

科学と違って芸術に推敲の終わりはなく、その無限性の彼方で精神分裂と闘うことを「芸術行為」と呼ぶのだと思うが、最近僕はバランス主義者に転じたのでタテの思考とヨコの思考を上手く切り替えられるようになった。


ヨコの思考というのは「視点の増殖」であり、タテの思考というのは「視点の追求」であり、昔の僕はいかなる視点もほぼ完熟するまで次の視点に向かわなかったのだが、最近は矢継ぎ早に視点をシフトするような思考方法に切り替えた。


それは一言で言えば好きなこと(できること)以外はやらない、そして好きなこと(できること)は徹底的にやり尽くすということで、その思考放棄と徹底思考のシフトバランスを見極める行為が「創作の勘」の獲得に繋がるのである。


僕は吉本隆明的に「誰でも10年続ければモノになる」という考え方だけど、この「モノになる」というのは言い換えれば「勘を掴む」ということであり、一度それを掴んだら創作の現場から離れちゃいけない。勘はすぐに風化するからであり、最低でも素振りはしとかなきゃいけない。


そして僕は音楽で言う所のサンプリングについて肯定的だけど、そういう所から出発すればこの「勘へのアクセス」というのは正直10年もかからない。即ち「浅瀬から思考するなかれ、前線から思考するべし」ということで、原始人から出発するのではなく先人のエッセンスを盗む現代人になればいいのだ。


どうでもいいことだけど、そういう態度で続けてきた個人的な企画がもうすぐ実る所まで来た。今や吸水しなくてもエキスを絞り出せる万能雑巾になった気分で(我ながら訳の分からん例えだ)、それが「勘を掴んだ証明」ということなのかもしれないな。