シームレスモーション
ドラゴンズドグマの動画を観ていて気付いたのだけど、特殊攻撃ないしはスキルと思われる攻撃ではスタミナを消費してるけど、通常攻撃ではおそらくスタミナを消費していないということ。
これはオープンワールドのテンポを考えた結果なのかな、と軽く見流してたのだけど、どうやらモンスターハンターも攻撃ではスタミナが減らないみたいだ。それどころかスタミナが減ってる時に攻撃をしてもスタミナが回復するぐらいだから、何らかの意図があるのかな、と考え直してみた。
デモンズソウルやダークソウルは攻撃でスタミナが減るけど、あれはルールが閉じられた世界だからプレイテンポはある程度無視できる。要するに、原則シングルプレイだから万が一「棒立ち」になってもなんとか許容される。影響を受けるのはシングルプレイヤーその人に限られるからだ。
もちろんそこにはそこのゲーム性、旨みがあるのだけど、マルチプレイやオープンワールドだと「シームレスに繋がる」ことの方が重視されるのかもしれない。モンハンだと一人棒立ちしてる訳にはいかないし、ドラゴンズドグマだとこちらが待機中でもクリーチャー側はシームレスにやって来るしね。
ダークソウルのスタミナ管理はゲーム性に繋がってるけど、それが破綻した時のとばっちりが仲間に移るようなゲーム性では、シェアするのに抵抗がある。要するにMOならまだしも、少なくともMMOにはならない、できないだろうと思う。4人PTで2人がスタミナ破綻した絵なんて、ジレンマでしかない。
僕はMMOはUOしかやってないけど、スタミナありきのMMOはおそらくないんじゃないのかな。それがアクションゲームのトレンドから来るものなのか、ゲームテンポを考慮した結果なのかは分からないけど、最近で言えばスカイリムもウィッチャー2も通常攻撃はスタミナ消費しないし、両面あるのかな。
トレンドは最終的に文法になり、プレイヤーの間でシェアされ、そのジャンルにおける暗黙のルールになる。それを破壊して独創的なものを造ろうとしても、強度の問題じゃなく、共有の問題でほとんどの場合受け容れられない。まあアクションゲームはピンキリだけど、FPSの自然回復とか中々覆らない筈。
ちなみにRPGのターンバトルは覆ったけど、いきなり覆った訳じゃないし、自然推移的に分化していったと見る方が妥当だ。そして一度分化したジャンルはニッチなニーズ埋めが乱立して、固定数のユーザーがあちこちに分散し、ジャンル的に飽和する訳だ。
そういう意味では今のFPSは食傷気味だけど、ある意味健全なのかもしれない。ほとんど同様のルール且つ同様の操作体系であるからこそ、ユーザーはゲーム体験にダイレクトに飛び込める。言わばシリーズ単位ではなく、ジャンル単位でのゲーム性のシェアが働いてる訳だ。
このシェアが崩れ始めると、固定数のユーザーの争奪戦が始まり、ゲーム性がニッチさに還元され始め、乱世というか、競争原理が働く。そしてその飽和、分裂したジャンルから革めてトレンドが生まれ、飽和、分裂、トレンド、飽和……の繰り返しに発展していく。
CoDやBFの二強体制が健全だとしても、食傷気味なのは否めない。VANQUISHのゲームとしての良し悪しは横に置いとくとしても、築かれた文法から小さく動くメーカーばかりの中で、大きく動いたその先見性はとても評価できると思う。
話を戻そう。アクションRPGが分化していると仮定して、デモンズソウルの「通常攻撃でスタミナを消費する」というルールの導入は、トレンドになるほどではなくても「大きく動いた証」だ。築かれた文法に従ってエフェクトだけを入れ替えるアスラズラースとは意味が違う。
僕は大きく動けば大きく変わる、大きく変われば相対化できる、相対化できれば差別化できる、という考えを持ってるけど、それは割とシンプルな変化でもいい。ゲームで言えばVANQUISHもそうだし、文学で言えば家畜人ヤプーもそうだ。
海外はまだ分からないけど、こんな当たり前のことが今のゲーム業界は中々できない。デジャヴを破壊するのはたった一つの前提で構わないし、その一つの行く末が不安だと言うのなら、それはディレクションの才能がないだけだ。世界性に通じないフェティシズムなんてないというのが僕の信仰だし。
アイディアに対する先見性もディレクションの範疇だけど、見切り発車から偶然性を組織化するのもディレクションの範疇だ。「ゆけば分かるさ」じゃないけど、既知のレシピに頼るのではなく、リアルタイムでゲーム性を調理する才能がクリエイターには要る。
一つのシンプルな前提を与える、只それだけの一点豪華主義が、総じてカタルシスに繋がる構造を、僕は信じる。これは半分詭弁だけど、繋がらなかった場合はディレクションの才能が欠けていただけ。文化が分化して、そのそれぞれが全て輝いているように、最大値は取れなくてもその近似は取っていける。
結局何の話かよく分からなくなったけど、僕は「ダークソウルのシステムはMMOになり得るか」みたいなことを考えてた。漠然と難しいイメージはあるのだけど、逆にブレイクスルーになるイメージもある。問題はゲーム性のシェアよりも、絵面的に棒立ちはどうなのよ、ってとこだろうな。
回避策はそうだな……第三のゲージ(端的に言えばMP)を設けて循環的に消費するとかだろうな。まあ僕がこんなこと考えても仕方ないんだけど、TESのMMOが出る噂もあるし、FF14も死に体みたいだし、日本勢も後追いばっかりやってる場合じゃないと思うのだ。
ちなみにTESはあのままでMMOになるだろうな。いざという時に何度でも攻撃できるし、ダメージモーションがないからPTプレイとの親和性も高い。でも個人的にはダメージモーションがしっかりしてて、あるモーションからあるモーションに移る時にモーションスキップがないようなMMOがやりたい。
要するに、トータルでシームレスなMMOがやりたい。PTプレイとの親和性は悪いかもしれないけど、面白さの最大値はこっちの方が多分上だ。これに加えて通常攻撃時のスタミナ消費を仕様化するとMMOにならんだろうから、落とし所としてドラゴンズドグマがあるのかも。早くプレイしてみたい。
ダメージモーションも棒立ちの要因になり得れば、スタミナも棒立ちの要因になり得るので、その両方の要素を省いているのが例えばディアブロだ。というかハクスラ全般に言えると思うけど、そこには然るべき理由がある訳だ。
PCゲームは操作性の多彩さとそこから来る操作量の多さは強いけど、CSゲームのコントローラによる世界への没入感みたいなものは、正直弱い。重厚さがないというか、なんとなく腰が浮いているというか、総じて「軽い」のだ。
何が言いたいかというと、ハクスラにダメージモーションとスタミナを導入し、尚且つテンポも崩れないゲームが造れたとすれば、CSゲーム的な重厚な没入感と、PCゲーム的な多彩な操作量を両立できる訳で、企画のテーマとしては中々面白いわな。
ドラゴンズドグマがそうだとは言わないが、モーションスキップが少なそうという点では軽くないし、アクション面ではスカイリムよりよっぽど重厚だと思う。スタミナの重みもダークソウルほどではないが一応あるし、通常攻撃でそれを消費しないのはトレンドというよりジャンル的な必然なのかもしれない。
最低でも通常攻撃が控えているから、スキルでスタミナを使い切った後も棒立ちにはならない。一方ダメージモーションに関してはテンポとトレードオフだと思いがちだけど、モーションキャンセル(要は格闘ゲームのキャンセル)ができれば一応テンポも取っていける。重厚さはなくなるけどね。
要はダメージモーションをアタックモーションでキャンセルしたりするということだけど、そこをシームレスにする、要するにモーションAにBが割り込んだ時、AのモーションをスキップせずにBのモーションへと自然推移するようなゲームは造れないのかな。
難しいんだろうけど、モーション全種が相互推移できるような、モーション設計はできないのかな。もちろん単発でBを出した時とAにBを割り込ませた時のモーションは、同種でありながらも若干異なるようにして、それでいてモーションのフレーム数を一致させることができれば、かなり面白くなる筈。
要は一つのモーションに対し単発モーションだけでなく、繋がるモーションの種類だけ推移モーションを用意し、尚且つ可能な限りモーションのフレーム数を一致させる。これができればダメージモーションを導入しても、テンポを取れるし、重厚な没入感との両立ができる。
回避モーションが格闘ゲームのキャンセルみたいに、それまでのモーションを無視するアクションゲームは結構あると思うけど、回避を含めた全てのアクションが相互的に自然推移できれば、結構画期的かもしれない。既にあるかもしれないけど、ハクスラの進化に与するようなそれはまだない筈。
ディアブロにはゲームテンポがあるけど、アクションの重厚さは片手落ち。ダークソウルにはアクションの重厚さがあるけど、ゲームテンポは片手落ち。この両方のいいとこ取りをしたハクスラ、出てこないかな……。