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THINK ABOUT SOMETHING.

ビジョンとバランス

「事が起きてから再発に備える」というのは簡単だけど、「事が起きる前に事に備える」というのはかなり難しい。子供を見ればこれは明らかで、十字路を何の躊躇もなく全力で突っ走ったりするけど、自転車にぶつかったりあるいはそれ寸前になったりして、初めて次から注意する。


厳密にはこれは子供だけではなく、大人でもあまり変わらない訳だけど、この「注意のキッカケ」は上記の例で言えば接触事故だろう。その事故が寸止めで終われば「次から注意しよう」となって、一番理想的だけど、事故で大怪我をした場合「次から注意しよう」は同じでも、体のダメージが全然違う。


もちろん「次から注意しよう」と思えるボーダーラインは人それぞれだけど、人は「最初から注意しよう」という発想には中々ならないから、意外とギリギリの所で生きている。つまりボーダーラインがいくら低い所に設定されていても、不測の大事故が初回に来る可能性はある訳だ。


もちろん「最初から注意しよう」と思うことだって山ほどある。泥棒が入るまで家の鍵を閉めたことがなかった、なんて話は聞いたことがないし、ある程度の備えは誰もがしてるんだろうけど、そういう常識的な範囲以外の部分でも、同じレベルの危険性が普通にはらんでいたりする訳だ。


「ならなきゃ分からない」というのは結構真理で、しかしその発想はトラブルの元。10代半ばぐらいまでは完全にこの思考形態だから、何か問題が起きた時に親の責任に還元するのは正直酷な話。でも還元せざるを得ないから、子供のトラブルはある種の運任せだったりする。


そして20代になると少しは賢くなって、「最初から注意しよう」の範囲が広がっていく。要は「次から注意しよう」を繰り返してる内に、全部をそれで処理すると大変なことになると気付く訳だ。だからと言って全部に対して備える訳にはいかないから、人それぞれに前例を踏まえたボーダーラインができる。


これが30代になるとそのボーダーラインがどんどん落ちていって、人生の先を考えるようになる。要は「転ばぬ先の杖」を少しずつ意識し始め、しかしやはり全部に対して備える訳にはいかないから、ここで「直観力」が形成され始める。「感性」と言い換えてもいいけど、要は問題の精査のスキルだ。


ここでも根っこにあるのは10代20代の失敗=前例であって、それを応用させられる年齢が30代以降ということになる。また20代のボーダーラインと30代の直観力は混同できるものではなく、前者が「自然形成される注意の閾値」とすれば、後者は「精神年齢から来る勘」と言うことができる。


だから30代でぐっと落ちる「ボーダーライン=自然形成される注意の閾値」を超えていない問題でも、「直観力=精神年齢から来る勘」に引っかかれば「最初から注意しよう」の対象になり得るし、逆に超えている問題を「最初から注意しよう」から除外することもある。


厳密なモデルとしてはこうだ。直観が働く人はボーダーラインを高めに取れるけど、直観があまり働かない人はボーダーラインを低めに取らざるを得ず、例えば自分とかがそうで、結果的に安全パイに逃げようとする。


だから「最初から注意しよう」ばかりに逃げて、「問題が起きてから対応しよう」に振り分けることが中々できない。そこで前述したような大事故が起きるか起きないかが、頭の中で曖昧でハッキリしないからそうなる。


でも「最初から注意しよう」に全部振り分けるのも、逆に「問題が起きてから対応しよう」に全部振り分けるのも、両方破綻するのは間違いない。前者は例えば職場だと仕事がまともにできないし、後者はトラブルだらけになるのは目に見えているからだ。


だから結局両者のバランスになって来るんだけど、ボーダーラインは所詮一般論的な指標にしかならないし、最後は直観力=ビジョンが一番の武器になる。これを養えるのは結局日頃からの洞察に他ならず、生活とか仕事とかの直観力が最近すごく欲しかったりします。