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THINK ABOUT SOMETHING.

タイムパフォーマンス

イデアというのは大別して二つあると思う。一つは『アップデート』、一つは『イノベーション』だ。アップデートは既存のモノを理想化する行為であり、サブカテゴリーには自動化、無線化、小型化、円滑化、高速化、複合化、補完化、効率化、一般化、簡易化、多様化などがある(まだまだあると思う)。

 

要は既存のモノの伸び代を詰めていくということだが(サブカテゴリーはその形式)、後半になるに連れ同じ伸び幅を得るのに必要な想像量は指数関数的に高くなっていく。1から2に引き上げるのと、8から9に引き上げるのでは、同じ伸び幅でも要求されるアイデアレベルが全然変わってくる訳だ。

 

0から始まったものの9が理想点として、10、即ち位の上がる瞬間がある。それが『イノベーション』だ。もちろんこれは9から10に到るケースも、例えば5から段階飛ばしに10や100に行くケース(例えば技術的特異点)もあるだろう。そしてこの位が上がることを僕は『斜め上』と定義する。

 

0から9までは純粋な『上』のアップデードだが、10は桁数が増えて『斜め上』がドドンと現れるからだ。そしてこれは指数関数的に最も負荷の掛かるポイント(9→10)に相当し、そこから先はまた負荷が初期化される(0から始まる)。しかし10には必ずしも9から到る訳ではないのが面白いところ。

 

その原因にはこういうものが考えられる。位の上がり目が負荷を初期化させるなら、それは単純なアップデートの繰り返しからは中々そうならないというもので、アップデートすればするほど負荷は指数関数的に高くなっていく原則が上述の通りある。従ってその指数関数を無視する思考が要求される訳だ。

 

それがイノベーションタイプの思考、『足し算』ではなく『掛け算』、上述したサブカテゴリーを複数横断した『組み合わせの妙』であり、その組み合わせ自体が『新たなるモノ』を形成する場合、負荷がなくなるのは当たり前のことなのだ。新たなるモノ=理想なき原石=理想化し放題という訳だ。

 

従って9まではアップデートタイプでもイノベーションタイプでも到達できるが、9→10にしろ2→10にしろ、10に到る時は必ずイノベーションタイプの思考が要求される。そしてこのタイプの思考は9に到るまでのアップデートタイプの思考を先行すること(先に9を過ぎること)もあるのである。

 

要は既存のモノが別モノになり、そこから新たな理想化の可能性が一気に開けるようなもの、それがイノベーションだ。そしてこのイノベーションは当然ハードウェアに多い。何故なら上述したサブカテゴリーを容易に横断できるからだ。家電が高くても売れる、というのはつまりこういうことなんだろう。

 

アップデートは課題設定をしっかりやり、時間をかければ必ずできるものだと思う。課題そのものの想像力、方法論のセンスなどは違えど、時間をかけて解けない謎はあんまりない。翻ってイノベーションは組み合わせの妙技だから、「これとそれで多分こうだ!」というような錬金術的な推理が要求される。

 

ハードウェアの錬金術師と言えばAppleが思い浮かぶ。彼らはアップデーターでありイノベーターでもあり、その推理力(直観力の方が正確か)は一線を画してるような気がする。その力の正体は結局『想像力』と『センス』だと思うし、ならばアップデーターからイノベーターになることは可能なのだ。

 

『想像力×センス=タイムパフォーマンス』とすれば、想像力とセンスを磨けば『時間をかければ解けない謎はあまりない』の言葉にかけて、ほとんどの謎は解けるようになる。これは僕の信仰。